ご支援いただきました皆様へ
心温まるご支援を本当に、本当にありがとうございました! 文化芸術活動に対し、これほど多くの方が応援してくださったということが、何よりも大きな励みであり、喜びです。
20年演劇に携わってきて、初めての公演中止でした。毎日毎日「今日が最後かもしれない」と思いながら稽古に臨み、日を追うごとに作品は良くなるのに、危険は高まる…。その苦しい葛藤の日々は生涯忘れることはないと思います。だからこそ、皆様をはじめ、中止の決定後にいただいた沢山の応援の言葉やご支援は、中止の苦しみを補ってなお余りある、大きな幸福になりました。
今回の経験を経て、次に描くべき作品が何であるのか、その表現の場がどこになるのか、模索する日々が続いています。一人の表現者として、この状況に甘んじて、ただじっと座っていることなどできるはずもなく、皆様からのご支援をもとに、新たな表現手法を探しながら活動を続けていきたいと思っています。
現在、多くの方が動画を用いた新たな作品を発表しています。そこに新たな可能性を感じながらも、演劇というものが舞台と観客の間のコミュニケーションにどれほど多くのものを依存していたかということを、改めて実感しています。観客と共に一つの「空間」を作る、その経験は何ものにも代えがたいものであり、今後も失ってはならないものです。しかし同時に、今後も安定的に活動を継続していくためには、動画等を用いた表現手法を確立することは必須でありましょう。ライブだからこそ生み出せる空間と、動画ならではの表現手法。葛藤はまだまだ続きますが、その両者の狭間で思い悩むことができるのは、それでも表現の場を失うことよりもはるかに幸せなことだと、今は感じています。
劇場が元の状態を取り戻すには、多くの時間がかかるでしょう。だからこそ、再び劇場の戸が開いた時、そこにあるものは、この困難な時を乗り越えたからこそ生まれる、より優れた作品でなくてはならない。今という時間をただの停滞にしてはならない。それが、このように多くの方からのご支援を受けた我々が、皆さんにできる約束だろうと思っています。
9PROJECT 渡辺和徳