渡辺です。9PROJECTを結成して、丸10年が経ちました。公演回数はいつの間にか20回を数え、気がつけばあっという間だったなあ…と思います。僕が北区つかこうへい劇団に入ったのが、1999年。そこからつかさんが亡くなるまでが11年。もう同じくらいやってるわけで…。そう思うと長いですね。ここではちょっと、その10年を振り返ってみたいと思います。
つかさんが生きてた当時にはやれなかった、70〜80年代のつか作品をやってみよう、と、「ストリッパー物語」を皮切りに、今では上演されなくなった「生涯」だの「出発」だのを上演してきました。「熱海殺人事件」の初演版をやった時は、その面白さにぶっ飛びまして、「え、なんでこの後、書き換えたの??」と、つか劇団時代の自分達の存在意義すら疑いました。
初めは読み解くことすら難しかったつか哲学も、最近はすっかり慣れまして、逆にそれを学んだ今だからこそ読み解ける「売春捜査官」なんかもやってみました。新しい発見がありまくり、昔の自分の浅はかさに情けなくもなりました。
何本か、オリジナル作品も上演しましたね。普段は脚本業で身を立ててる僕ですが、ここぞとばかりに外の仕事では絶対に書けないような、実験や挑戦を織り交ぜて作ってみました。つか芝居ファンのお客様には、カラーの違いに驚かれた方もいたかもしれませんが、挑戦のない9PROは9PROではありません。自身の幅を広げるためにもまたやると思いますので、ぜひお付き合いください!
前回はとうとう、つかさんの原点、別役実さんの作品にも挑戦しました。「ここにいたか、つかこうへい」という感じで、この10年間で学んだことを裏付けられもしましたし、上書きもされました。あの天才を理解する道のりは、まだまだ半ばのようです。
ここまで10年。たった3人で結成した9PROJECTでしたが、前回公演、10年の節目にまさかの智之が離脱。2人になってしまいました。とはいえ、これまでもたくさんの常連俳優や先輩たちに支えられてきた9PROJECTですから、同様にいろんな俳優さんにお声をかけて、頑張っていきたいと思っています。
で、11年目のスタートは「幕末純情伝」
9PROJECTでやるなら、やはり初演版の「黄金マイクの謎」しかないよね、ということで、出版されている戯曲と残された映像から、いいとこ取りをして脚本を作っています。普段は戯曲を全く変えないのが売りの9PROJECTなんですが、そのままやると3時間半くらいかかる芝居なので…。
まあ、長いのもそうなんですが、戯曲と映像で全くと言っていいほど芝居が違うんですよね。これはもうつかこうへいあるあると言いますか…本番中も芝居が変わるのが当たり前です。しかも、つかさんは当時、演劇活動を再開したばかり。書きたくてしょうがなかったんでしょう。映像を見ていても、ノリノリで作っているのが目に浮かびます。
ということで、つかさんが描こうとしているのはこの辺だろうな、というのが伝わるよう、僕なりにセリフの取捨選択をさせていただきました。その点はご容赦ください。
ただ、今回は僕オリジナルのセリフは一個もありません。これまでの9PRO作品で言うと、「二代目はクリスチャン」とか「つか版・忠臣蔵」なんかは、僕が脚本を書き起こしていることもあって、かなりオリジナルのセリフが入ってます。でも今回の「幕末」は無理です。この「THE つか芝居」の台詞の中に、僕の台詞は入らないわ…。
個人的なこだわりポイントを一つ…
9PROJECTが結成された旗揚げ公演「ストリッパー物語」(ヒモのはなし 改題)のラストシーンでは、「コインランドリー・ブルース」を流して、寄り添い眠る明美とシゲさんの姿で幕を下ろしました。これ、実は「幕末純情伝」の戯曲のラストが元になってます。戯曲をお持ちの方は、ぜひ最後のページを開いてみてください。「コインランドリー・ブルース」を流したのもそうだし、倒れていた明美が起き上がって膝枕をするのも、「幕末」のト書きが元です。
今回の「幕末純情伝」のラストシーンがどうなるかは、作ってみないと分からないんですけど、十周年の節目に、旗揚げ公演の元ネタが来るというのも面白いなあ、と思っています。
ということで、結成10周年ということなので、10年の振り返りと、次の公演について書いてみました。チケットの発売開始は、9/21からに迫ってきました。9PROJECTの新たな10年のスタートです。ぜひ応援よろしくお願いいたします!